工場を止めずに塗装はできるのか|稼働中・夜間・休日施工で先に決めること

工場を止めずに塗装する 発注側が先に決める6項目の文字が入った、安全柵とシートで区切られた工場内の塗装エリア

この記事の結論:稼働中の工場でも、塗装できる場合はあります。止めずに塗れるかどうかは、止める範囲・作業する時間帯・換気と臭気の扱いで決まり、どれも工場側(発注側)が先に決める項目です。見積りを依頼する前に、この記事で整理する6項目を社内で決めておくと、施工側との打ち合わせが具体的になります。

「設備を止めずに塗装したい」は、工場の設備保全・総務・購買の担当者が最初に考えることの一つです。ただ、止めずに済むかどうかは、施工する側だけでは決められません。どの区画をいつ空けられるか、同じ建屋で働く人をどうするかは、工場側の判断だからです。

この記事では、工場全体の稼働をできるだけ止めずに塗装を進めるために、発注側が先に決めることを整理します。配電盤・キュービクルの停電を伴う作業や、据え付けた大型機械をその場で塗る方法は、ここでは扱いません。なお、塗装naviプラスは株式会社ユーコーが運営する情報サイトで、当サイト自体では塗装工事を行っていません。

目次

見積り前に社内で決める6項目

稼働を止めずに塗装するための条件は、次の6項目に分けられます。それぞれの詳しい内容は、この後の見出しで扱います。

項目決めること決めずに進めると起きやすいこと
1. 止める範囲区画だけか、ライン・建屋まで止めるか見積りの前提が業者ごとにずれる
2. 作業する時間帯平日の日中・夜間・休日・長期連休のどれで行うか工期と費用を同じ条件で比べられない
3. 換気と臭気施工中と乾燥中に、同じ建屋で人が働くか着工の直前に、作業を見合わせる判断が出る
4. 養生と持ち込む塗料の量守る対象と、構内に置く塗料・溶剤の量と場所製品や設備への飛散、構内の危険物の管理の漏れ
5. 立入管理区画の表示、入退管理、立会い、他工事との調整施工区画への立ち入り、火気を使う作業との重なり
6. 工期の分け方1回で終えるか、区画や時期を分けるか時間に合わせて、下地処理や乾燥の時間が削られる

このうち1・3・5は、施工側に任せても決まらない項目です。安全衛生・設備保全・生産管理の担当者を見積りの段階から加えておくと、後から条件が変わりにくくなります。発注前の判断全般は「工場の設備・機械の塗装|見積り前に決めておく3つの判断軸」で扱っています。

止める範囲を区分けする

「工場を止める」といっても、実際に止まる範囲は場合によって違います。次の3つに分けて考えると、社内での話がまとまりやすくなります。

工場の床に安全柵とチェーンを張り、塗装する鉄骨架台の区画と稼働を続ける通路を分けた様子
施工区画と、稼働を続ける範囲の境目を先に決めます(イメージ)
範囲止まるもの主に決めること
区画塗る場所とその周りだけ施工区画の線引き、通路・搬送路の確保
ラインその設備を使う工程全体前後の工程の在庫、代わりに使える設備の有無
建屋同じ空間で働く人の作業換気、臭気、火気の制限

検討は「区画だけ止めたい」から始まることが多いものの、溶剤を含む塗料を屋内で使う場合は、換気や臭気の条件によって、同じ建屋の作業にも影響が広がることがあります。

区画を決めるときは、図面に施工区画と稼働を続ける範囲の境目を書き入れ、人やフォークリフトの通り道が施工区画を横切らないかを確かめます。横切る場合は、迂回路を用意するか、通行を止める時間帯を決めておきます。

作業する時間帯を決める

どの時間帯に作業するかで、止まるものと費用の考え方が変わります。

時間帯止まるもの費用の考え方段取りで確かめること
平日の日中施工区画と、条件によっては同じ建屋の作業深夜・休日の割増賃金は通常かからない稼働中の人・車両との動線の分け方
夜間夜間に稼働していなければ、生産への影響は小さい深夜の労働には法定の割増賃金がかかる照明、入退管理、翌朝の始業までににおいが抜けるか
休日休日に稼働していなければ、生産への影響は小さい法定休日の労働には法定の割増賃金がかかる立会いの担当者、構内の鍵の受け渡し
長期連休・定期休止計画した停止期間の中で完結しやすい同じ時期に入る工事が多く、日程の調整が要る他の保全工事との順番、乾燥に充てる日数
夜間の暗い工場内で、三脚に載せた2台の投光器が塗り替え中の鉄骨架台を照らしている様子
夜間の施工では、仕上がりを確認できる明るさの照明を用意します(イメージ)

夜間と休日の費用が日中より高くなるのは、人件費に法定の割増が含まれるためです。労働基準法第37条と関係する政令により、深夜(原則として午後10時から午前5時)の労働には2割5分以上、法定休日の労働には3割5分以上の割増賃金を支払うことが使用者に義務づけられています。

複数社の見積りを比べるときは、割増の有無よりも、各社が同じ範囲・同じ工程・同じ時間帯で見積もっているかを確かめるほうが、比較の精度が上がります。

夜間に作業する場合は、仕上がりを確認できる明るさの照明を用意できるかも決めておきます。暗い中では、塗り残しやむらを見落としやすくなります。敷地の周りの環境によっては、夜間の音やにおいが時間帯の制約になることもあります。

臭気と換気:同じ建屋で働く人をどうするか

塗装中と乾燥中は、塗料に含まれる溶剤のにおいが出ます。屋内で有機溶剤を含む塗料を使う作業には有機溶剤中毒予防規則(以下、有機則)が適用され、溶剤の区分によっては、発散源を密閉する設備、局所排気装置、プッシュプル型換気装置のいずれかを設けることが求められます。窓を開けて換気するだけで足りるとは限りません。

発注側が決めておくのは、次の3点です。

  • 施工中と乾燥中に、同じ建屋で自社の作業者が働くかどうか
  • 既存の換気設備で足りるか、仮設の換気を施工側に求めるか
  • 翌日の始業までに、においが抜けた状態にしておく必要があるか

「水性塗料なら規制の対象外」と考えられることがありますが、有機則の対象かどうかは製品の呼び名ではなく、含まれる物質で決まります。使う予定の塗料・薄め液・洗浄剤の安全データシート(SDS)を施工側から受け取り、自社の安全衛生の担当者に確認してもらうのが確実です。

においや揮発する成分の影響が気になる製品を扱う工場では、製品の保管場所や搬送の経路も、施工区画から離しておけるかを確かめておきます。

養生の範囲と、構内に持ち込む塗料の量

養生は、塗料の飛散や、さび落とし(ケレン)で出る粉じんから、周りのものを守るための作業です。施工区画の外にある次のものを事前に一覧にしておくと、漏れが減ります。

  • 製品・仕掛品・原材料の置き場
  • 稼働を続ける設備と、センサー・カメラなどの検出器
  • 床の白線・区画線、通路の表示
  • 空調の吸込口や換気扇(においや粉じんが別の区画へ回るのを防ぐ)
塗装区画の隣にある機械と床を、透明なビニールシートとマスキングテープで覆った様子
施工区画の外にある設備や床は、飛散を防ぐために覆います(イメージ)

持ち込む塗料と溶剤の量にも注意が要ります。塗料用の溶剤の多くは、消防法の危険物の第4類(引火性液体)に当たります。

区分引火点指定数量(非水溶性)指定数量(水溶性)
第1石油類21℃未満200L400L
第2石油類21℃以上70℃未満1,000L2,000L
出典:消防法 別表第一、危険物の規制に関する政令 別表第三

指定数量以上の危険物は、原則として許可を受けた施設以外では貯蔵・取り扱いができません(消防法第10条)。指定数量未満でも、市町村の火災予防条例による規制の対象になる場合があります(同法第9条の4)。

工場にすでに塗料や洗浄用の溶剤がある場合は、施工で持ち込む分がそこに加わります。持ち込む量・保管する場所・保管する時間帯は、構内の危険物の担当者を通して決めます。どの区分に当たるかは製品のSDSで確認し、判断に迷う場合は所轄の消防本部に確認してください。当サイトで個別の事例に当てはめて判断することはできません。

立入管理と構内のルールを決める

稼働中の工場では、施工する人と工場で働く人が同じ構内にいます。次の取り決めを、着工前に文書でそろえておきます。

  • 施工区画の表示:区画の境目をロープや看板で示し、立入禁止の範囲を社内で共有する
  • 入退管理:施工者の入構手続き、名簿、鍵の受け渡し、夜間・休日の連絡先
  • 立会い:誰が、どの時点(着工・中間・完了)で立ち会うか
  • 火気を使う作業との重なり:溶接・溶断・研削など火花が出る作業と、塗装・乾燥の時間を重ねない
  • 他の工事との調整:同じ時期に入る設備工事や清掃の日程
  • 万一の損害への備え:施工業者が損害賠償保険に加入しているか、補償の範囲はどうか

保険は、稼働中の設備や製品のすぐ近くで作業する場合に、発注前に確かめておきたい項目です。加入の有無だけでなく、施工区画の外にある設備や製品が補償の対象に含まれるかも確認しておきます。

工期の分け方:時間が足りないときの選択肢

止められる時間から逆算して工程を組むと、短くしやすいのは下地処理と乾燥の時間です。しかし、どちらも塗膜の付着や耐久性を左右する工程で、短くすると剥がれや膨れとして後から表れることがあります。やり直しになれば、設備を2回止めることになります。

時間が足りないと分かったときの選択肢は、工程を短くすることではなく、次のいずれかです。

選択肢向いている場合決めること
区画を分けて複数回にする一度に空けられる範囲が狭い区画の順番、各回の間隔
次の定期休止・長期連休まで待つ劣化の進み方が急ぎではないそれまでの応急処置の要否、休止日程の確保
外せる部品やカバーを別の工程にする取り外して塗れるものがある予備品の有無、取り外しと取り付けを誰が行うか

据え付けた機械をその場で塗る方法や、配電盤の停電を伴う段取りは、対象の設備ごとに条件が大きく変わるため、ここでは扱いません。塗装後の仕上がりの確かめ方は「設備・機械塗装の仕上がりを検収で確かめる方法|膜厚・付着性・外観」で整理しています。

よくある質問

稼働中の工場でも塗装はできますか

区画を分けられ、換気・臭気・動線の条件が整えば、稼働を続けながら塗装できる場合があります。可否は工場ごとの条件で変わるため、止める範囲と時間帯を社内で決めたうえで、施工側に相談します。

夜間や休日に施工すると、費用は上がりますか

深夜や法定休日の労働には法定の割増賃金がかかるため、人件費は日中より高くなるのが一般的です。見積りを比べるときは、各社が同じ範囲・工程・時間帯で見積もっているかを確かめます。

水性塗料なら、換気の心配はいりませんか

有機則の対象かどうかは、製品の呼び名ではなく含まれる物質で決まります。SDSで成分を確かめ、自社の安全衛生の担当者に確認してもらいます。

配電盤や据え付けの機械も、止めずに塗れますか

停電が必要かどうかや、その場で塗れるかどうかは設備ごとに異なり、この記事の範囲を超えます。対象の設備を特定したうえで、施工側に個別に確認してください。

まとめ

  • 止めずに塗れるかどうかは、止める範囲・作業する時間帯・換気と臭気で決まり、どれも発注側が先に決める項目です
  • 見積り前に6項目を社内で決めておくと、業者ごとの見積りの前提がそろいます
  • 夜間・休日の費用には、法定の割増賃金が含まれます
  • 持ち込む塗料の量は、構内にすでにある危険物と合わせて管理します
  • 時間が足りないときは工程を短くせず、区画や時期を分けます

設備・機械の塗装を実際に検討する場合

6項目が決まれば、施工側に条件を伝えて見積りを取る段階です。換気の確保や、夜間・休日の体制は、施工する会社によって対応が異なります。

生産設備・機械の塗装を手がける株式会社ユーコーが、対応範囲と工程を公開しています。株式会社ユーコーは損害賠償保険に加入しており、休日・夜間の施工にも対応しています。リンク先は、当サイトの運営会社である株式会社ユーコーのサービスページです。

監修・運営者

監修:株式会社ユーコー 代表取締役 沖 裕也(塗装歴25年)。現場と見積りの両方を見てきた立場から、本記事の内容を確認しています。
運営:株式会社ユーコー。塗装naviプラスは当社が運営する情報サイトで、塗装工事は行っておりません。詳しくはこのサイトについてをご覧ください。

出典

  • 有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)第5条(e-Gov法令検索)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第9条の4、第10条、別表第一(e-Gov法令検索)
  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第1条の11、別表第三(e-Gov法令検索)
  • 労働基準法(昭和22年法律第49号)第37条(e-Gov法令検索)
  • 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)(e-Gov法令検索)
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