設備の塗装仕様の決め方|錆びやすさともたせたい年数で考える

この記事の結論
設備や機械の塗装仕様は、「その設備がどれくらい錆びやすい場所にあるか」と「次の大きな塗り替えまで何年もたせたいか」の2つを決めれば、あとは業者が塗料や塗り回数を提案できます。この2つを見積り依頼に書いておくと、業者ごとの提案を同じ条件で比べられます。書き方に迷ったら、国際規格 ISO 12944 の区分(錆びやすさは C1〜CX、年数は L・M・H・VH)を共通のものさしとして使えます。
「設備の塗装を頼みたいが、仕様と言われても何を決めればよいのか分からない」という工場の保全・購買担当の方に向けて、発注前に決めておくことを、専門用語をできるだけ使わずに整理します。
監修:株式会社ユーコー 代表取締役 沖 裕也(塗装歴25年)/運営:株式会社ユーコー(運営者情報)
設備の塗装仕様は「錆びやすさ」と「もたせたい年数」の2つで決める
塗装仕様を決めるときに発注側が考えるのは、「どれくらい錆びやすい場所か」と「何年もたせたいか」の2つだけで足ります。どの塗料を何回塗るかは、この2つが分かれば業者が決められます。
反対に「錆びにくい塗装で」「長持ちする仕様で」とだけ伝えると、業者ごとに思い浮かべる場所や年数がばらばらになります。A社は10年、B社は20年を想定して見積もれば、金額が違うのは当然で、どちらが良いのか比べられません。
| 発注側が決めること | 業者に任せてよいこと |
|---|---|
| どれくらい錆びやすい場所か | 使う塗料の種類 |
| 何年もたせたいか | 塗り重ねる回数と塗膜の厚さ |
| 色・塗る範囲・作業できる日時 | 下地の処理のしかた(どこまで錆を落とすか) |
錆の落とし方や、設備を止められる時間の考え方は「工場の設備・機械の塗装|見積り前に決めておく3つの判断軸」で詳しく説明しています。
錆びやすさは「設備の置き場所」で決まる
錆びやすさは、設備がどこに置かれているかでおおよそ決まります。空調の効いた屋内なら錆びにくく、海の近くの屋外や、薬品・湿気の多い場所ほど錆びやすくなります。

| 置き場所の例 | 錆びやすさ | ISO 12944の区分 |
|---|---|---|
| 空調のある清潔な屋内(事務所・店舗など) | とても低い | C1 |
| 暖房のない倉庫など、結露することがある屋内/汚れの少ない地域の屋外 | 低い | C2 |
| 湿気の多い製造室(食品工場など)/都市部や工業地域の屋外 | 中くらい | C3 |
| 化学工場の屋内/工業地域や、海に近い屋外 | 高い | C4 |
| いつも結露している屋内/湿気と汚れの多い工業地域や、塩分の多い海沿いの屋外 | とても高い | C5 |
| 洋上の設備など、特に厳しい場所 | 非常に高い | CX |
水に浸かる部分や土に埋まる部分には、別に Im1〜Im4 という区分があります。タンクの内側や埋設配管が対象になる場合は、その旨を業者に伝えてください。
同じ工場の中でも、場所によって錆びやすさは違う
錆びやすさは工場全体で1つに決めるものではありません。屋外の配管架台と屋内の制御盤では、同じ敷地でも条件が違います。屋内でも、薬液がはねる場所や、蒸気で常に湿っている場所は錆びやすくなります。塗ってほしい設備ごとに考えるのが基本です。
判断がつかないときは、場所の様子を伝えるだけでよい
区分を自分で決められなくても問題ありません。次のことを見積り依頼に書けば、業者が錆びやすさを判断して提案できます。
- 屋内か屋外か
- 海からのおおよその距離
- 設備の周りに水・薬品・油・熱があるか
- 結露しやすいか、今どこに錆が出ているか
そのうえで「どの錆びやすさを想定したか」を見積書に書いてもらうと、他社の見積りと並べて比べられます。
「何年もたせたいか」は設備をあと何年使うかで決める
もたせたい年数は、その設備をあと何年使う予定かで決めるのが分かりやすい方法です。数年で入れ替える設備に、20年もつ仕様は必要ありません。逆に長く使う設備なら、塗り替えのたびに止める手間を考えて、長めの年数を選ぶ考え方があります。

| ISO 12944の区分 | 次の大きな塗り替えまでの目安 | 向いている設備の例 |
|---|---|---|
| L | 7年まで | 数年のうちに入れ替え・移設する予定の設備 |
| M | 7〜15年 | 使っている間に1回は塗り替える前提の設備 |
| H | 15〜25年 | 長く使い、止める回数を減らしたい設備 |
| VH | 25年超 | 高い場所や狭い場所など、塗り替えそのものが難しい設備 |
この年数は「保証期間」ではない
ここでいう年数は、塗り替えの計画を立てるための目安です。ISO 12944 でも保証期間ではないとされています。「H で頼んだから15年は保証される」わけではないので、保証の期間と範囲は契約のときに別に決めてください。決め方は「設備・機械の塗装の保証はどう決めるか|契約前に確かめる6項目」で整理しています。
ISO 12944は、業者と話を合わせるための「共通のものさし」
ISO 12944 は、鉄の設備や構造物を塗装で錆から守るための国際規格です。上の表の「C4」「H」のような記号で、錆びやすさと年数を短く伝えられるのが利点です。
- 見積り依頼では「C4・H」のように2つを並べて書くと、業者は条件に合う塗料と塗り回数を選べます。規格には、区分の組み合わせごとの塗装の例も載っています(ISO 12944-5)。
- 規格の年版も書いておく。年数の区分は古い版(1998年版)と今の版(2017年版)で違うため、「ISO 12944-1:2017 による」のように書くと誤解がありません。
- 社内の塗装仕様書がある場合は、そちらを優先するか先に決める。どちらに合わせるかが決まっていないと、見積りが二通りになります。
記号を使わず、「海に近い屋外、15年はもたせたい」のように言葉で書いてもかまいません。大切なのは、全部の業者に同じ条件を伝えることです。
見積り依頼にそのまま書ける塗装仕様の記入例
見積り依頼には、塗ってほしい設備ごとに次の項目を書きます。決まっていない項目は空欄にせず「未定(提案してほしい)」と書くと、業者が前提を置いて提案しやすくなります。
| 書く項目 | 記入例 | 決まっていないとき |
|---|---|---|
| 塗ってほしい設備 | 屋外の配管架台、屋内の制御盤(外側) | 写真や図面で範囲を示す |
| 錆びやすさ | 海に近い屋外(C4 の想定) | 場所の様子を書いて提案してもらう |
| もたせたい年数 | 15年程度(H の想定) | 設備をあと何年使う予定かを書く |
| いまの状態 | 前の塗装あり、一部に錆 | 現地で見てもらう |
| 色 | 今と同じ色 | 色番号が分かれば書く |
| 仕上がりの確認 | 塗膜の厚さの測定記録がほしい | 業者のやり方を書いてもらう |
仕上がった後に塗膜の厚さなどをどう確かめるかは「設備塗装の検収で確かめること」で説明しています。
まとめ|設備の塗装仕様は2つを決めて全業者に同じ条件で伝える
- 発注側が決めるのは「錆びやすさ」と「もたせたい年数」の2つ。塗料や塗り回数は業者に任せてよい
- 錆びやすさは置き場所で決まる。設備ごとに考え、分からなければ場所の様子を伝える
- 年数は設備をあと何年使うかで決める。この年数は保証期間ではない
- ISO 12944 の記号(C1〜CX、L〜VH)を使うと、業者と短く正確に話を合わせられる
- 見積り依頼には設備ごとに条件を書き、決まっていない項目は「未定」と書く
設備の塗装仕様の決め方についてよくある質問
- 設備の塗装仕様は、発注側がすべて決めないといけませんか?
-
いいえ。発注側が決めるのは「どれくらい錆びやすい場所か」と「何年もたせたいか」の2つで足ります。分からない場合は、設備の置き場所の様子と、あと何年使う予定かを伝えれば、業者が仕様を提案できます。
- 錆びやすさが C3 か C4 か分からないときはどうすればよいですか?
-
区分を決めずに、屋内か屋外か、海からの距離、周りに水・薬品・熱があるかを見積り依頼に書いてください。業者に想定した区分と理由を書いてもらい、全社に同じ条件を伝えると比べやすくなります。
- 15〜25年(H)で頼めば、その期間は保証されますか?
-
保証されるとは限りません。ISO 12944 の年数は塗り替え計画のための目安で、保証期間ではないとされています。保証の期間と範囲は、契約のときに別に決めてください。
- 国内の工場でも ISO 12944 を使ってよいですか?
-
使えます。国際規格ですが、国内の設備でも発注側と業者の共通の言葉として使えます。社内の塗装仕様書や取引先の指定がある場合は、どちらを優先するかを先に決めておきます。
設備・機械の塗装を実際に検討する場合
当サイトの運営会社である株式会社ユーコーでは、キュービクル・配電盤などのメンテナンス塗装、大型機械設備・貯水タンク・ろ過器などの新設塗装を行っています。錆びやすさや年数が決まっていない段階でも、設備の置き場所や状態をもとに仕様の相談ができます。
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