貯水タンク・ろ過器の塗装を依頼する前に決めること|内面と外面の仕様

この記事の結論:貯水タンク・ろ過器の塗装は、塗る面が「飲み水に触れる内面」「飲み水以外に触れる内面」「外面」のどれかで、使える塗料と工程が分かれます。飲み水に触れる内面には、水道施設の技術的基準を定める省令による浸出の基準がかかります。依頼の前に、水の用途・内面を含むか・止められる期間の3点を決めておくと、見積りの前提がそろいます。
当サイト「塗装naviプラス」は、株式会社ユーコー(工場・設備の塗装を手がける会社)が運営しています。この記事では、工場や施設の貯水タンク・ろ過器の塗装を業者に依頼する前に、発注側で決めておきたいことを整理します。記事の最後に、当社のサービスページへのリンクを置いています。
貯水タンクの塗装は「水に触れる面かどうか」で仕様が分かれる
貯水タンクの塗装で最初に決まるのは、塗る面が水に触れるかどうか、触れるならその水を飲むかどうかです。この区分で、選べる塗料と確認すべき書類が変わります。

| 塗る面 | 主な対象 | 塗料選びの前提 | 依頼時に確認すること |
|---|---|---|---|
| 飲み水に触れる内面 | 受水槽・高置水槽など飲用の貯水槽の内面 | 浸出の基準に適合する塗料であること | 塗料の規格適合・試験成績の有無 |
| 飲み水以外に触れる内面 | 工業用水・冷却水・消火用水のタンク、ろ過器の内面 | 水質・薬品・水温に対する耐性 | 水の成分、薬品注入の有無、水温 |
| 外面 | タンク・ろ過器の胴体、架台、はしご、配管の取り合い | 屋外か屋内か、結露するか | 設置環境、既存塗膜の状態、色の指定 |
外面だけの塗り替えであれば、一般的な設備・機械の塗装と同じ考え方で進められます。内面を含むかどうかを依頼の最初に伝えると、業者側は対応の可否と工程をすぐに判断できます。対応できる塗料・工法は業者によって異なるため、ここを後から伝えると見積りのやり直しになりやすい部分です。
飲み水に触れる貯水タンク内面の塗装には、浸出の基準がある
飲用の水に触れる内面の塗料は、水に溶け出す物質の量に基準があります。業者任せにせず、使う塗料がその基準を満たしているかを書面で確認しておくと安心です。
水道施設の技術的基準を定める省令(平成12年厚生省令第15号)第1条第17号ハは、浄水または浄水処理過程の水に接する資機材等の材質について、国土交通大臣及び環境大臣が定める試験で浸出させたとき、その浸出液が別表第二の基準に適合することを求めています。
塗料側の規格としては、日本水道協会規格に JWWA K 135(水道用液状エポキシ樹脂塗料塗装方法)や JWWA K 157(水道用無溶剤形エポキシ樹脂塗料塗装方法)があります。自社のタンクがどの基準の対象になるかは、水の供給経路と施設の区分で決まります。当サイトでは個別の該当を判断できないため、設備の管理部門や所管の窓口に確認してください。
発注側で押さえておきたいのは次の3点です。
- 使用する塗料の製品名と、該当する規格・基準
- 浸出に関する試験成績書など、適合を示す書類を受け取れるか
- 塗装後、注水・通水までに必要な硬化の時間
貯水タンクの塗装日程は、清掃と断水の枠から逆算する
既設の貯水タンクの内面を塗るには、水を抜いて空にする必要があります。そのため塗装の日程は、塗装側の都合ではなく、清掃や断水を行える日から逆算して組むのが現実的です。
水道事業から供給を受ける水だけを水源とし、水槽の有効容量の合計が10立方メートルを超える施設は「簡易専用水道」にあたります(水道法第3条第7項・同施行令第2条)。設置者は、水道法第34条の2と同施行規則第55条により、1年以内ごとに1回以上、水槽を清掃することとされています。
言い換えると、タンクを空にする日は、年に一度すでに予定されていることが多いということです。清掃に合わせて内面の点検と補修・塗装を組み込めば、断水の回数を増やさずに済みます。ただし、塗装には乾燥と硬化の時間が加わるため、清掃だけのときより断水期間は長くなります。代替の給水をどうするかは、着工前に決めておく項目です。
新設のタンク・ろ過器の場合は、据え付け前に塗るか、据え付け後に現地で塗るかで工程が変わります。製作工程の中で塗装を済ませるのか、据え付け後に仕上げるのかは、製作側と塗装側の分担として見積りの前に整理しておきます。
タンク内部の塗装は、外面とは別の安全管理が要る
タンクの内部は、外面の塗装にはない労働安全衛生上の規制がかかる場所です。作業するのは塗装業者でも、自社の構内で行われる以上、発注側も前提を知っておくと打ち合わせが早く進みます。

- 酸素欠乏の危険 — 労働安全衛生法施行令 別表第6 第4号は、相当期間密閉されていた鋼製のボイラー・タンク・反応塔・船倉など、内壁が酸化されやすい施設の内部を酸素欠乏危険場所として挙げています(内壁がステンレス鋼製のものなど一部を除く)。
- 有機溶剤の扱い — 有機溶剤中毒予防規則は、タンクの内部を「タンク等の内部」として定義しており、溶剤を含む塗料を使う場合は、換気や呼吸用保護具について屋外の作業とは別の管理が求められます。
見積りの段階で、業者に次のことを確認しておくと、当日の手戻りが減ります。
- 酸素濃度の測定と換気の方法
- 作業主任者の選任と、タンク外の監視の体制
- 出入口(マンホール)の大きさと、資材・換気設備の搬入方法
- 立入禁止にする範囲と、周辺設備の養生
ろ過器・貯水タンクの塗装を依頼する前に決める5項目
ここまでの内容を、依頼前のチェックリストにまとめます。相見積りを取る場合は、全社に同じ内容を渡すことが前提です。
- 水の用途 — 飲用か、工業用水・冷却水・消火用水か。薬品の注入や水温の条件があればその情報も
- 塗る範囲 — 内面を含むか、外面のみか。架台・はしご・配管の取り合いまで含めるか
- 新設か既設か — 既設なら前回の塗装時期と、さび・ふくれ・はがれの範囲。写真があると見立ての精度が上がります
- 素材 — 鋼製・ステンレス・亜鉛めっきなど。素材が変われば前処理が変わります
- 止められる期間 — 清掃・断水を行える日、代替給水の有無、注水・通水を再開したい日
寸法・数量・納期は仕様によって変わるため、当サイトでは一律の数値を掲載していません。対象を確認したうえでの回答になります。
見積りの比較のしかたは、工場の設備・機械の塗装|見積り前に決めておく3つの判断軸で、素地調整の程度や塗膜に持たせたい機能の決め方とあわせて解説しています。
貯水タンクの塗装は現地で行い、外せる部材は持ち帰りも選べる
据え付け済みの貯水タンク・ろ過器は動かせないため、現地での塗装が基本です。一方で、蓋・はしご・架台の一部など取り外せる部材は、持ち帰って塗る選択肢があります。

焼付塗装・粉体塗装は加熱の設備が必要なため、現地では行えません。取り外せる部材をこれらの工法で仕上げたい場合は、持ち帰りの扱いになります。現地塗装と持ち込み塗装の使い分けの考え方は、設備・機械の塗装の記事一覧にまとめています。
貯水タンクの塗装でお断りすることがある依頼
株式会社ユーコーがお断りすることが多いのは、金額だけで決まる依頼と、塗装不良の懸念を織り込まずに設定された短納期の依頼です。
貯水タンクでは、後者が結果に直結します。断水の期間を短くしたいあまり、素地調整を浅くしたり、硬化を待たずに注水したりすれば、日程には収まります。しかし密着が不十分な塗膜は早期にはがれ、内面であれば水の中に塗膜片が出ることにもなりかねません。断水期間は、塗料の硬化時間を含めて組むことをおすすめします。
仕上がりの確かめ方(膜厚・付着性・外観)は、設備・機械塗装の検収|膜厚・付着性・外観の確かめ方で解説しています。
まとめ|貯水タンク・ろ過器の塗装で先に決めること
- 塗る面が「飲み水に触れる内面」「飲み水以外に触れる内面」「外面」のどれかで、塗料と工程が分かれる
- 飲み水に触れる内面は、浸出の基準に適合する塗料かを書面で確認する
- 既設タンクの内面塗装は、清掃・断水を行える日から逆算して日程を組む
- タンク内部の作業には、酸素欠乏と有機溶剤の管理が加わる
- 断水期間は、硬化時間を含めて確保する
貯水タンクの塗装でよくある質問
- 貯水タンクの塗装は外面だけでも頼めますか
-
頼めます。外面だけであれば水を抜く必要がなく、一般的な設備・機械の塗装と同じ考え方で進められます。架台・はしご・配管の取り合いまで含めるかは、見積りの前に決めておきます。
- 受水槽の内面は、どんな塗料でも塗れますか
-
塗れません。飲み水に触れる内面には、水道施設の技術的基準を定める省令による浸出の基準があります。日本水道協会規格の JWWA K 135 などが塗料側の規格の例です。使う塗料が基準に適合しているかを書面で確認してください。
- 貯水タンクの塗装に合わせて断水はどのくらい必要ですか
-
タンクの大きさ、補修の範囲、塗料の硬化時間で変わるため、一律の日数は示せません。清掃だけのときより、乾燥・硬化の時間ぶん長くなります。清掃の予定日に合わせて相談すると、断水の回数を増やさずに組めます。
- ろ過器の塗装は、本体を取り外さないとできませんか
-
据え付け済みのろ過器は、現地で塗装するのが基本です。蓋や架台の一部など外せる部材は、持ち帰って焼付塗装・粉体塗装で仕上げる選択肢もあります。
貯水タンク・ろ過器の塗装を実際に検討する場合
株式会社ユーコーは、キュービクル・配電盤などのメンテナンス塗装から、大型機械設備・貯水タンク・ろ過器などの新設塗装まで、設備・機械の塗装を手がけています。
- 対応素材:鉄、アルミ、ステンレス、亜鉛めっき など
- 前処理:脱脂、リン酸処理、ブラスト など
- 色の指定:日塗工番号、RAL、現物合わせ
- 現地施工:北海道から沖縄まで出張の実績があります
- 飲用タンクの内面:関西ペイントの水道用塗料(JWWA規格)による施工実績があります
- 稼働中の工場での施工:可能です。夜間・休日の施工もご相談ください
内面を含むかどうか、水の用途、止められる期間をお知らせいただければ、対応の可否からお答えします。
※リンク先は、当サイトの運営会社である株式会社ユーコーのサービスページです。
監修:株式会社ユーコー 代表取締役 沖 裕也(塗装歴25年)/運営:株式会社ユーコー(運営者情報)
出典
- 水道施設の技術的基準を定める省令(平成12年厚生省令第15号)第1条第17号ハ(厚生労働省 法令等データベース)
- 水道法 第3条第7項・第34条の2、水道法施行令 第2条、水道法施行規則 第55条・第56条(東京都保健医療局「簡易専用水道の情報」による整理)
- 日本水道協会規格 JWWA K 135 水道用液状エポキシ樹脂塗料塗装方法/JWWA K 157 水道用無溶剤形エポキシ樹脂塗料塗装方法(日本ダクタイル鉄管協会「日本水道協会規格」一覧)
- 労働安全衛生法施行令 別表第6 酸素欠乏危険場所 第4号
- 有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号)「タンク等の内部」の定義
